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管理職の決裁ーでダメになる

 大手企業の決裁は、主任→係長→課長→部長〜とまわり、その間に内容が直されますが、大体において最終の内容は「何も面白くない、価値のない」ものに変わってしまいます。たとえば約7人の管理職の決裁印が必要であった場合、その中に1人でも保守的な人がいると、そこで大幅に「無難(ぶなん)な内容」に書き換えられてしまいます。
 最近あったひどい例を紹介しましょう。ある社の新商品「ABC」の試作品に関するアンケート調査です。調査結果では、外観は洗練されているがいまいち使い勝手が悪い部分があちこち指摘されていました。調査結果をまとめた報告書の決裁はなんとか進み、さてお次は難関の超保守派M次長へ決裁を取りに行った時の話です。M次長は報告書を読み終えるなりこう言ったのです。「苦情が多すぎるじゃないか、なんとかならんのか」。「なんとかならんのか。ならんのか」の連呼です。つまり新商品に良い印象をもった意見が大多数であったように書き換えろーという要望です。(ここで1つ注意ですが、M次長は決して「変更しろ。」とは言っていません。「なんとかしろ。」という曖昧な言い方です。これは万が一、後で問題が起きた時に備えて「書き換えの指示などしていない。」と言い逃れるためだと思われます。)
 起案者の彼の説明だと、このままではなんとしても通さないという態度なので、報告提出時間も迫ってたということもあり、「使い勝手が悪い」と指摘された意見をかなりカットし、数少ない「良いという意見」の割合が8割を占めているかのようにアンケート結果を改ざんしてしまったそうです。M次長としては、本社のエリート幹部や役員が心血を注いで完成させた新商品「ABC」は世間からも良い評価を受けられるべきと決めつけているのです。改善点を指摘する意見が多い報告書では本社の幹部を傷つけ、私への印象も悪くなるーという考えのようです。
 さて、こうして改ざんされた報告書は所長へ回されます。所長曰く、「おっ、満足という意見が多いな。さすがは我が社の優秀な技術陣が心血を注いで作った製品だ。」と、上機嫌で承認の印をポン。こうしてウソの報告書はついに本社の中枢へ。本社幹部:「おっ、満足という意見が多いな。さすがは我が社の優秀な技術陣が心血を注いで作った製品だ。我々も苦労したかいがあったというものだ。」と満足します。そして、新商品「ABC」は若干の調整の後、量産体制に入ります。そして、自信満々で新発売、売りだした結果はーどうなるかわかりますよね。
 これほどひどい例はあまりないにしても、多くの管理職の印を必要とする従来の決済方法では保守的な管理職が一人いるだけで決裁の過程で内容が無難なものに変えられてしまい、上層部へ正しい情報が伝わらないという大きな欠点があります。

 最近、業績をぐんぐん伸ばしている「アイリスオーヤマ」の新商品提案についての決裁風景。ミーテイング形式で行われ、平社員の発案者が大山社長以下幹部に直に「自分が開発した新商品」を説明する。そして主に社長と発案者の直トークにより「採用する、しない」、改善点などが決定される。

               社長が正しい判断ができる人ならば、この方法は良いと思われる。

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